Hardware

TITAN RTXの水冷化(全体構成)

前回の記事では、NVIDIA TITAN RTXにEKWBの水冷ブロックを取り付ける方法に焦点を当てていましたが、ここではTITAN RTX水冷化の全体構成を載せておきます。

全体構成と使用する機材

TITAN RTX水冷の全体構成は次のように組んでいます。

 

構成について補足

スペースの都合で全てをPCケース内に納めることはできなかったので、チューブを伸ばして水冷ブロック以外は全てPCの外側に設置するように構築しています。ポンプの性能によって全体的な水路の長さに制限が出てくるようですが、今回の構成の場合は3m以内くらいの目安で良いと思います。

水冷キットを外付けする場合、その取付方法が悩みどころですが、私の場合はラジエーター&ポンプ&リザーバーをこのメタルラックの上に設置して利用しています。サイズもピッタリで、エアフローも問題無く確保できます。

あと、上記の構成図には載せていませんが、実際には角度を付けて配管するコネクタ(EK-AF Angled 45° G1/4)や、自由に回転させてチューブのねじれを解消できるコネクタ(EK-ACF Rotary Fitting 10/16mm)なども取り付けています。このあたりは配管の取り回しなどでも変わってくるので必要に応じて使ってみてください。

 

水冷化する時の注意点

TITAN RTXの水冷化に限りませんが、水冷化を行う上で注意するポイントをいくつか紹介します。

アルミニウムを使用した製品を混在させない

冷却液を通して種類の違う金属同士がつながると、電食(電蝕)と呼ばれる金属が腐食して溶け出す現象が発生します。イオン化傾向が離れている金属通しを組み合わせるほど電食の影響は顕著になり、特にアルミニウムは水冷に使われる他の金属(銅やニッケルなど)とイオン化傾向が大きく異なるためアルミニウムを利用した水冷パーツは使わないようにする必要があります。(冷却液に触れない部分であれば問題ありません)

ちなみに、EKWBの製品(水冷ブロックやフィッティング用のコネクタなど)は、ほとんどがニッケルメッキされた製品になっています。

冷却液は専用のクーラントを使用する

水冷液(クーラント)はパーツを冷却する以外に、金属の腐食や電食を抑える役割もあります。そのため、水冷専用のクーラントを使用するようにしてください。
水道水をそのまま利用する…人はいないと思いますが、色々な不純物が混ざっている水道水の利用は厳禁になります。希釈して使うタイプのクーラントもありますが、この場合は精製水を使うようにしてください。

チューブサイズに合わせた機材を使用する

水冷用のチューブにはいくつかのサイズが存在しています。チューブサイズが異なれば、フィッティング用のコネクタなどもサイズが異なってくるため、使用するチューブのサイズに合わせた機材を使うようにしてください。

EKWBのフィッティングとチューブに関するガイドなどでも説明してありますが、厚みの少ないチューブは柔らかくて扱いやすい代わりに、折り曲げた部分がつぶれやすくなる傾向があります。個人的には、10/16mm (3/8” – 5/8”)のソフトチューブがおすすめです。

 

機器の接続

機器にフィッティング用のプラグを接続

下図のように、ラジエーター、ポンプ&リザーバー、水冷ブロックにフィッティング用のプラグを取り付けます。TITAN RTX(GEFORCE 2080 Ti)用の水冷ブロックには穴が4つあいているので、利用しない片側の穴はEK-CSQ Plugなどで栓をします。

六角レンチやペンチを使う場合は、きつく閉めすぎないように注意してください。必要以上に強く閉めると、接続部分などに亀裂が入って水漏れする可能性があります。

ファンなどの取り付け

機器の配置方法によっても異なりますが、ラジエーターにファンやポンプ&リザーバーを取り付けます。

私の場合は、ラジエーターの下側から上方向に送風するようにして、ラジエーターの上に12cmファン用のブラケットを使ってポンプとリザーバーを固定しました。これをPCケース外のスチールラックの上に載せて使っています。

機器の接続

ソフトチューブを適切な長さに切断して、各機器を接続していきます。

つなぎ方に決まりはありませんが、部品の中ではポンプが熱に弱いので「ラジエーター→リザーバー→ポンプ→水冷ブロック」の順番でクーラントが循環するように接続しています。IN/OUTの方向が決まっている機器の場合はIN/OUTの方向に注意しながら取り付けてください。

必須ではありませんが、水冷ブロックから伸びるチューブにはワンタッチで水路を切り離せる「EK-QDC 10mm Black」を取り付けています。こうしておけば、クーラントが満たされた状態でも簡単に機器の取り付け、取り外しが行えるので便利です。取り外す時も、クーラントが1滴漏れるかどうか…という感じです。(EK-QDCは取り付ける方向が決まっています。取り外し用のボタンが三角形になっており、この矢印の方向に向かってクーラントが流れるようにすれば良いです)

チューブを接続するフィッティングの金属部分は、チューブを取り付ける前に無水エタノールなどで金属に付いた油分を拭き取っておくとチューブが抜けづらくなるのでおすすめです。

 

本格稼働前の準備

組み上げたら、早速クーラントを投入して稼働…といきたいところですが、その前にやっておくべき作業がいくつかあります。

機器の洗浄

必須ではありませんが、機器やチューブの内部にゴミが残っていることもあるため、使用前に精製水などで機器内部の洗浄をおすすめします。このとき、水漏れのチェックも合わせて行えます。

水冷化したパーツはPCに取り付ける前の状態(取り付けた場合はPCの電源が入らない状態)でリザーバーに精製水を注入し、水冷ポンプだけを稼働させます。ポンプを稼働させるとリザーバーの水がすぐに無くなると思うので、ポンプの電源を切り再度リザーバーに水を入れる…という作業を何度か繰り返します。

しばらくするとリザーバーの水位が下がらなくなるので、この状態でラジエーターや水冷ブロックを傾けたりしながら簡単にエア抜きを行います。(洗浄が目的なので本格的なエア抜きは不要だと思います)

このまま数時間稼働させながら、水漏れが無いかどうかも合わせてチェックします。接続部分を指で触りながら水漏れしていないかどうかチェックしてください。

洗浄が完了したら水路のどこかを取り外し、内部の精製水を捨てます。ラジエーターや水枕内部には水が残りやすいので、傾けたり、ホースの片側からエアダスターで空気を送ったりしながら水抜きをします。(水滴などが少し残った状態になると思いますが、精製水を使っているので多少は残っていても問題無いと思います)

水冷ポンプは水が入っていない状態で空回しすると故障します。そのため、リザーバーの水が無くなったらポンプの稼働を止めて、ポンプを空回ししないように注意しながら作業してください。

 

PCへの取付とクーラントの充填

洗浄と簡単な水漏れチェックができたら、水冷化したパーツをPCに組み込んで、リザーバーからクーラントを入れていきます。

クーラントを入れるときも、洗浄の時と同様に、PCの電源は入れない状態でポンプだけを稼働させてクーラントを満たしていきます。PCへ取り付ける際に接続部分が緩んでいる可能性もあるので、接続部分はタオルなどで養生して、再度水漏れが無いかどうかもチェックするようにしてください。

リザーバーに入れるクーラントの量ですが、ギリギリまで入れるのでは無く、9割くらいの量を目安に入れてください。ギリギリまでクーラントを入れていると、体積が増えたときにクーラントが漏れる可能性があります。

クーラントにはブラックライトを当てると光る、蛍光タイプの物が存在します。本来は見た目を良くするために使われることが多いのですが、蛍光タイプのクーラントは水漏れチェックも行いやすい…というメリットがあります。

ほんのわずかな量でもブラックライトを当てると発光するので、特にこだわりが無ければ蛍光タイプのクーラントをおすすめします。

 

エア抜き

水冷をする上で、エア抜きは重要です。エア抜きが行えていないと、水漏れや機器の破損、ノイズ、冷却能力の低下などの問題が発生します。

クーラントを入れてポンプを稼働させたまま、ラジエーターや水冷ブロックを傾けながら内部のエア抜きを行っていきます。完全にエア抜きが完了するまでは数日間かかるので、リザーバー上部のキャップは少し緩めた状態(空気が抜けていく状態)で、1週間くらいはそのまま利用します。
また、エア抜きをするとリザーバーの水位も下がっていくと思うので、適宜クーラントも充填してください。

エアが抜けた後はリザーバーのキャップを完全に閉めても良いのですが、気になる場合は空気圧を自動で調整するためのバルブをリザーバーのキャップに取り付けておくと良いと思います。こうしておけば、内部の空気圧が高まった場合に自動でエア抜きが行われるようになり、空気圧による機器破損やチューブ外れを気にしなくて良くなります。また、空気圧が正常な場合は弁が閉じた状態になっているので、クーラントの揮発も抑えられます。

 

TITAN RTX水冷化の効果

最後に、NVIDIA TITAN RTXを水冷化した後の効果を簡単に載せておきます。

水冷化のハードルは少し高いですが、水冷化後の結果には大変満足です。
標準の空冷ではファンの音が大きく、クロック数も1700MHzくらいまで下がってしまいます。3D Markのストレステストにもパスできません。
水冷化した後は、ファンノイズが聞こえないくらいの40~45%で運用していますが、それでもGPU温度は38度くらいで安定しています。GPUクロックも大きく低下することが無く、1850MHz前後で稼働しており、3D Markのストレステストも簡単にパスできます。

ベンチマークテストでも、GPUのクロック数が落ち込まない分、水冷化した方が結果が良くなっています。(3D Mark TimeSpy 1.0の場合、5%くらい高速化)

内容(高負荷時) 水冷化する前 水冷化した後
GPU温度(室温22度) 高負荷で77度前後 高負荷で38度前後
GPUクロック数 1700MHz前後 1850MHz前後
ファン速度 80~90%(3200rpm前後) 40~45%運用(900rpm前後)
ファンノイズ かなりうるさいレベル とても静か
3D Mark Time Spy
Graphics Score
14,609 15,361